相談事例 /
業務システム
学習塾のオンライン授業基盤がGW明けに停止 ─ 3日間で代替構成へ巻き取り、授業損失をゼロにした事例
課題
5月の連休明けに、外注で構築されていたZoom+独自LMSの認証基盤がDB障害で全停止。ベンダーは「復旧に最低1週間」と回答、保護者からの問い合わせが既に開始していた。
解決策
既存DBから生徒データのみサルベージ→Microsoft 365 Education のテナント新設→Teams + Forms + Stream の代替構成へ72時間で移行。並行して旧システムのDB復旧をリードオンリーで完了。
成果
平日3日分の授業をゼロロスで継続、保護者通知の電話本数を当初想定の1/8に削減。3ヶ月後に Teams 体制を本採用、年間ライセンス費を旧LMS比で42%減。
## ゴールデンウィーク明けの月曜朝、システムが立ち上がらない
ご依頼は2025年5月7日、火曜朝の9時12分でした。前日は祝日明け振替で塾はお休み、火曜から通常授業再開のはずだったが、教室管理者がオンライン授業用の LMS にログインできない。生徒数約600名、教室は4拠点、社員数12名、講師は学生アルバイト中心で総数35名。火曜の夕方17時から最初のオンライン授業が、すでに予定されていました。
電話を取って5分でわかった事実は、外注で構築された Zoom 連携用の独自 LMS が、認証DB(MySQL 5.7、AWS RDS)の障害で完全停止しているという状況です。LMS 側でユーザ認証ができないため、Zoom ミーティングURLの発行も、当日の生徒名簿照合もできない。LMS の構築・運用は別の制作会社が担当しており、その会社からの一報は「復旧には最低1週間、最大2週間かかる可能性」── 17時の授業まで残り8時間でした。
## 当日中にやった判断
最初の30分で決めた方針は、旧システムの復旧を待たない、というものです。新システムには Microsoft 365 Education を選定しました。理由を整理すると、学習塾はアカデミック割引(A1 Plus 無償、A3 月額3.25 USD/教職員)の対象になり、生徒アカウントは無償発行できる。Teams で授業を実施でき、Forms で出席確認、Stream で録画配信が標準機能で揃う。新規テナント発行から最初の Teams 会議開催まで、通常で4〜6時間で済む。スピード勝負の局面で、これに勝てる代替案はありませんでした。
並行して、旧 LMS の障害対応も走らせます。RDS スナップショットからのリードレプリカ生成と、AWS DMS によるデータ抜き出し。生徒の氏名・学年・受講中の講座・保護者連絡先の4テーブルがあれば、新環境への乗せ替えに足りる。完全な書き戻し復旧は諦め、必要なデータだけを抜く方針に切り替えました。
3つ目の判断は、保護者連絡の経路を一本化したことです。LMS が止まっている状況で、講師から個別連絡が走ると保護者は混乱します。教室長を中継点に置き、保護者への通知は教室長から SMS と電話のみ、講師は教室長に状況報告だけ、というシンプルな構造に切り戻しました。
## 72時間の動き
火曜9時〜13時、Microsoft 365 Education テナント発行、ドメイン認証、生徒・講師・保護者の3区分でセキュリティグループ設計。並行して RDS リードレプリカ起動。
火曜13時〜18時、Teams にクラス(チーム)を講座別に作成、合計42チーム。テンプレートを1つ作って Graph API で複製、所要時間およそ2時間。Forms で出席確認テンプレート作成、Stream のチャンネル設計。17時の初回授業はベテラン講師2名のクラスのみ Teams で実施、それ以外は教室長判断で対面授業に振り替え、保護者へは「今日はオンライン受講予定だった生徒にも、教室での対面授業を提供します」と通知。混乱は最小限に抑えられました。
水曜は一日かけて講師35名分のサインインと簡易研修。Teams の音声・カメラ確認、画面共有の練習、Forms での出席取得手順、Stream へのアップロード手順。30分の動画マニュアルを当センター側で作成、Teams のクラスノートブックに格納。
木曜午後、生徒・保護者向けの利用案内を LINE 公式アカウント・メール・教室掲示で同時アナウンス。木曜18時のオンライン授業から本格運用、出席率は通常時の97%に対して94%、これは事前連絡が間に合わなかった分のみで、想定の範囲内に収まりました。
## 旧システムの最終処置
旧 LMS の復旧は、外注先と当センターの並行作業で、依頼から6日目に「リードオンリーで参照可能」な状態まで戻しました。書き込みは許可せず、過去の受講履歴と教材データのアーカイブ用に限定。新システムを本採用するか、旧 LMS へ戻すかは、3ヶ月使ってから判断するという合意を経営層と取りました。
3ヶ月後、Teams 体制を本採用、旧 LMS は契約終了。年間ライセンス費は旧 LMS(生徒1人あたり月額480円)から Microsoft 365 Education + 自社運用へ移ることで、年間420万円→242万円、42%減になりました。教材の電子配布が OneDrive で標準化されたことで、紙の印刷費が月額18万円減という副次効果も得られています。
## この事例から伝えたい3点
1点目、業務停止の局面では「既存システムを直す」と「代替を立ち上げる」を並列で走らせるのが正解です。どちらかに賭けると、片方が転んだ瞬間に時間切れになります。
2点目、Microsoft 365 Education や Google Workspace for Education のアカデミック枠は、学習塾やオンラインスクールでも要件を満たせば申請が通ります。最初に「うちは対象外だろう」と諦めず、必ず確認すべきです。
3点目、ベンダーから「復旧に1週間」と言われた時点で、待つだけは選択肢から外すこと。代替構成の試算を並行で出し、経営判断のテーブルに2案を載せた組織が、最も早く正常運転へ戻れています。
## 並行運用フェーズで気をつけたこと
切り替え後30日間は、旧 LMS(リードオンリー)と Teams を並走させました。生徒・保護者の側に「資料がどこにあるか分からない」混乱が出るためです。具体的には、過去の授業録画と教材は旧 LMS、新規の授業録画・教材は OneDrive と Stream に切り分け、教室長が両方の動線を毎週案内する運用に。30日経過後、過去資料も OneDrive へ転載し、旧 LMS は完全クローズの判断を出しました。
このフェーズで一度ヒヤリとしたのが、講師のうち2名が「旧 LMS のままの方が慣れている」と新システムへの移行を渋り、ベテラン講師に限って Teams を使わず私用 Zoom で授業を実施していた事案です。生徒データが私用アカウントへ流れる事故になりかねないため、塾長判断で「業務利用 Zoom 禁止、Teams のみ許可」を契約書面に追加し、3日間の集中研修を再実施しました。
## 振り返って、もっと早くやるべきだったこと
この事例の最大の反省は、定期バックアップとリストア試験を「LMS 構築ベンダー任せ」にしていた点です。月額保守費を払っているからバックアップは取られているはずだ、という認識のまま3年運用しており、いざ復旧が必要になったときに「最新のバックアップが30日前」と判明しました。塾側で年に2回、本番リストアの動作確認をしていれば、外注先の問題が早期に発覚していた可能性があります。
オンライン授業基盤、業務システムの緊急復旧については、初動の方針提示まで24時間以内に対応可能です。困った時点で連絡してください。
ご依頼は2025年5月7日、火曜朝の9時12分でした。前日は祝日明け振替で塾はお休み、火曜から通常授業再開のはずだったが、教室管理者がオンライン授業用の LMS にログインできない。生徒数約600名、教室は4拠点、社員数12名、講師は学生アルバイト中心で総数35名。火曜の夕方17時から最初のオンライン授業が、すでに予定されていました。
電話を取って5分でわかった事実は、外注で構築された Zoom 連携用の独自 LMS が、認証DB(MySQL 5.7、AWS RDS)の障害で完全停止しているという状況です。LMS 側でユーザ認証ができないため、Zoom ミーティングURLの発行も、当日の生徒名簿照合もできない。LMS の構築・運用は別の制作会社が担当しており、その会社からの一報は「復旧には最低1週間、最大2週間かかる可能性」── 17時の授業まで残り8時間でした。
## 当日中にやった判断
最初の30分で決めた方針は、旧システムの復旧を待たない、というものです。新システムには Microsoft 365 Education を選定しました。理由を整理すると、学習塾はアカデミック割引(A1 Plus 無償、A3 月額3.25 USD/教職員)の対象になり、生徒アカウントは無償発行できる。Teams で授業を実施でき、Forms で出席確認、Stream で録画配信が標準機能で揃う。新規テナント発行から最初の Teams 会議開催まで、通常で4〜6時間で済む。スピード勝負の局面で、これに勝てる代替案はありませんでした。
並行して、旧 LMS の障害対応も走らせます。RDS スナップショットからのリードレプリカ生成と、AWS DMS によるデータ抜き出し。生徒の氏名・学年・受講中の講座・保護者連絡先の4テーブルがあれば、新環境への乗せ替えに足りる。完全な書き戻し復旧は諦め、必要なデータだけを抜く方針に切り替えました。
3つ目の判断は、保護者連絡の経路を一本化したことです。LMS が止まっている状況で、講師から個別連絡が走ると保護者は混乱します。教室長を中継点に置き、保護者への通知は教室長から SMS と電話のみ、講師は教室長に状況報告だけ、というシンプルな構造に切り戻しました。
## 72時間の動き
火曜9時〜13時、Microsoft 365 Education テナント発行、ドメイン認証、生徒・講師・保護者の3区分でセキュリティグループ設計。並行して RDS リードレプリカ起動。
火曜13時〜18時、Teams にクラス(チーム)を講座別に作成、合計42チーム。テンプレートを1つ作って Graph API で複製、所要時間およそ2時間。Forms で出席確認テンプレート作成、Stream のチャンネル設計。17時の初回授業はベテラン講師2名のクラスのみ Teams で実施、それ以外は教室長判断で対面授業に振り替え、保護者へは「今日はオンライン受講予定だった生徒にも、教室での対面授業を提供します」と通知。混乱は最小限に抑えられました。
水曜は一日かけて講師35名分のサインインと簡易研修。Teams の音声・カメラ確認、画面共有の練習、Forms での出席取得手順、Stream へのアップロード手順。30分の動画マニュアルを当センター側で作成、Teams のクラスノートブックに格納。
木曜午後、生徒・保護者向けの利用案内を LINE 公式アカウント・メール・教室掲示で同時アナウンス。木曜18時のオンライン授業から本格運用、出席率は通常時の97%に対して94%、これは事前連絡が間に合わなかった分のみで、想定の範囲内に収まりました。
## 旧システムの最終処置
旧 LMS の復旧は、外注先と当センターの並行作業で、依頼から6日目に「リードオンリーで参照可能」な状態まで戻しました。書き込みは許可せず、過去の受講履歴と教材データのアーカイブ用に限定。新システムを本採用するか、旧 LMS へ戻すかは、3ヶ月使ってから判断するという合意を経営層と取りました。
3ヶ月後、Teams 体制を本採用、旧 LMS は契約終了。年間ライセンス費は旧 LMS(生徒1人あたり月額480円)から Microsoft 365 Education + 自社運用へ移ることで、年間420万円→242万円、42%減になりました。教材の電子配布が OneDrive で標準化されたことで、紙の印刷費が月額18万円減という副次効果も得られています。
## この事例から伝えたい3点
1点目、業務停止の局面では「既存システムを直す」と「代替を立ち上げる」を並列で走らせるのが正解です。どちらかに賭けると、片方が転んだ瞬間に時間切れになります。
2点目、Microsoft 365 Education や Google Workspace for Education のアカデミック枠は、学習塾やオンラインスクールでも要件を満たせば申請が通ります。最初に「うちは対象外だろう」と諦めず、必ず確認すべきです。
3点目、ベンダーから「復旧に1週間」と言われた時点で、待つだけは選択肢から外すこと。代替構成の試算を並行で出し、経営判断のテーブルに2案を載せた組織が、最も早く正常運転へ戻れています。
## 並行運用フェーズで気をつけたこと
切り替え後30日間は、旧 LMS(リードオンリー)と Teams を並走させました。生徒・保護者の側に「資料がどこにあるか分からない」混乱が出るためです。具体的には、過去の授業録画と教材は旧 LMS、新規の授業録画・教材は OneDrive と Stream に切り分け、教室長が両方の動線を毎週案内する運用に。30日経過後、過去資料も OneDrive へ転載し、旧 LMS は完全クローズの判断を出しました。
このフェーズで一度ヒヤリとしたのが、講師のうち2名が「旧 LMS のままの方が慣れている」と新システムへの移行を渋り、ベテラン講師に限って Teams を使わず私用 Zoom で授業を実施していた事案です。生徒データが私用アカウントへ流れる事故になりかねないため、塾長判断で「業務利用 Zoom 禁止、Teams のみ許可」を契約書面に追加し、3日間の集中研修を再実施しました。
## 振り返って、もっと早くやるべきだったこと
この事例の最大の反省は、定期バックアップとリストア試験を「LMS 構築ベンダー任せ」にしていた点です。月額保守費を払っているからバックアップは取られているはずだ、という認識のまま3年運用しており、いざ復旧が必要になったときに「最新のバックアップが30日前」と判明しました。塾側で年に2回、本番リストアの動作確認をしていれば、外注先の問題が早期に発覚していた可能性があります。
オンライン授業基盤、業務システムの緊急復旧については、初動の方針提示まで24時間以内に対応可能です。困った時点で連絡してください。